家出女子高生からのSOS(No.3)
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家出女子高生からのSOS No.2の続き(実話)
A子の家に到着した。午前0時を回っている。
玄関の明かりは消えている。
車中では2人とも黙り込んでいる。A子は車から降りようとしない。
しばらくしてA子が観念したように車から降りた。
B子を車内に残して 玄関先に向かう。
「先生、鍵がかかってる」
「???」
A子がインターホンを鳴らすと、しばらくしてパジャマ姿の母親が眠そうな顔をして
出てきた。
「こんばんは」
「先生、すみません。こんなに夜遅くまで。ありがとうございました」
「無事でよかったです。お母さんとお話したいことはありますが、まだB子さんを送っていきますので今夜はここで失礼します」
私が一礼して顔を上げると
「さあ、早く自分の部屋で寝なさい」
そう言って 娘を玄関の中に引き寄せる母親の姿があった。
夫婦で夜遅くまで飲食店を経営しているから 疲れているのはわかるけど
私が想像していた親子の対面の状況とは かけ離れたものだった。
淡々とした会話を振り返り
A子は 何もなかったかのように今晩眠れるのか‥と思った。
どうして家出したのか 聞いてほしかったのでは??
「私の事なんか心配してないよ」
車の中でのA子の一言が耳に残っている。
一方、車内で B子は盛んに「家に帰りたくない」の言葉を・・・。
親がどれだけ心配していたのか 家出中の親の話を少しずつ聞かせる。
B子は涙ぐんでいる。
40分くらい車を走らせ、B子宅に到着した。
家中の電気が煌々と付いている。
車の気配を感じて、母親が玄関から飛び出してきた。
子どもの名前を呼び、泣きながら娘を力強く抱き寄せている。
B子も泣きながら母親と抱き合っている。
「先生、この度は・・・」と母親が言いかけたところで
玄関の中から父親が顔を出し、
「先生、外は寒いですからとにかく中に入ってください」
言われるがままに家の中へと案内される。
居間の奥には父親が立っている。
母親がB子を抱えるように居間に引き入れる。
続いて私も居間に入った途端、父親がB子に近づき
バシッ
B子の頬を平手打ちした。
その場の雰囲気が凍り付き 私は一歩退いてしまった。
「おまえ、自分のやったことわかってるのか。お前の行動でどれだけの人に迷惑をかけたか」
B子はか細い声で「ごめんなさい」
母と娘は再び抱き合って泣いている。
しばらく沈黙が続いた後、父親から
「先生、深夜まで本当にありがとうございます。今回は多大な迷惑をおかけし、親として申し訳ない気持ちで一杯です。申し訳ありませんでした。」
「いえ・・・・ 今は無事に帰ってきてくれたことでほっとしています」
父親が母親に言う。
「先生に温かい飲み物を・・・。」
用意されたお茶を一口いただき、しばらく話をしてB子宅を後にする。
自宅に到着したのは午前4時半過ぎ。
さすがに眠気が襲ってきたが、出勤するまでに2時間もないため仮眠する。
目が覚めると体中が痛い。
気を張っていたから、ハードな連日を乗り切ることができたように思う。
振り返って
2日後、学校に戻った2人は生徒指導措置を受けることになり、再び家庭訪問の日々が続いた。
家出の最大の理由は
・友人関係、家族関係に悩むものの、人に話せず悩み続けていたA子
・進路について、進学を勧める親に対し、自分に自信が持てず結論を出せない不安を抱え込んでいたB子。
・お互いに相談し合っているうちに 日ごろからの不満が増長し、現実から逃げたい気持ちがエスカレートし衝動的に家出した。
30前半で、教員経験も決して長いとは言えなかった自分。
自分が担任として何をすべきか、自分に何ができるか。
今も当時の日記を読み返し、とにかく必死に動き回っていたことがよみがえる。
生徒を理解すること、保護者としっかり連携をとること、学校内の報告・連絡・相談、教師として指導のポイントを押さえること、・・・・色々と学んだ経験でもありました。
生徒が無事に戻ったことが何よりです。
その後も、家出少年、家出少女を取り巻く件にも多くかかわってきましたが
家出は一つの信号を送っている行動であり、そうなる前にしっかり向き合い話を聞く環境を作ることも必要です。
未熟な子どもたちにとっては、家出の行動も大きな信号。
時代も変わり、世の中には事件や事故など様々な危険が潜んでいます。たかが家出とは言えません。
子どもの様子の異変に気づいたら、親としてしっかり子どもと向き合ってください。話を聞いてあげてください。
定年退職した今は、約40年の過去の経験を活かして子どもや保護者に様々なサポートをしていきたいと考えています。
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