家出女子高生からのSOS(No.2)
家出女子高生からのSOS No.2(実話)
高校の無断欠席、自宅に戻らず2日目に捜索願い。3日目の夕方、教員が集団で名古屋駅改札口周辺を捜索。(No.1より)
捜索からいったん学校に戻った後、A子宅家庭訪問後、B子宅の家庭訪問。 両親に出迎えられる。
父親は「ご迷惑をおかけして申し訳ない」と深く頭を下げた。 母親は憔悴しきっている。ただ涙ぐむばかりで言葉が出ない。 父親は、「17歳になって自己判断もできない娘が腹立たしい」と怒りが強く、興奮気味に話をする。
しかし、時間がたつとただただ無事に帰ってきてほしいと訴えるように言葉をはく。
子どもからの連絡をひたすら待ち続け、母親はずっと仕事を休んでいる。
家出の前日、B子は夜遅くまでA子と長電話をしていた情報から、2人が一緒にいる可能性が高い。
親の考え方としては、一人より二人でいてくれた方が心強くまだ救われるという。
所持金は2,000円前後で、二人合わせても5,000円に満たないようだ。
とにかく連絡を待ちましょう・・・とB子宅を後にする。
現代のように、携帯電話やLINEなど簡単に連絡を取る方法があれば、また進展も違ったのかもしれない。歯がゆさは隠せない。 本人へのメッセージを投げかける手段もあり、LINEなら未読・既読も確認できる。
そういった意味では携帯電話も役に立つ。 市内のカラオケハウスやゲームセンター、ショッピングモールなどを教員が分担して探すも 1日、2日と 進展が見られないまま時間が過ぎていった。
テレビのニュースが妙に気になり、悪い事件に巻き込こまれていないことをただただ願った。
毎日毎日が消化不良 長い通勤の道のりも 二人を見つけられるのでは・・と期待して女子高生の姿を追っていた。
どれだけ保護者と電話のやり取りをしただろうか。 (家出して5日目に進展あり)
仕事を終えて午後9時過ぎに自宅に帰ると、
「今、○○さんて生徒さんから電話があったよ」と母の声。
「えっ?えっ? まだつながってる?」
「もう切れた」
「それでなんて言ったの?」強い口調で聞き返す。
「まだ学校から帰ってきていませんが・・・」って。
「それでそれで・・・」
「うん。今、安城駅の近くの・・(略)・・・コンビニの前にいるって伝えてほしいって」
当時、自宅から約40KM、車で2時間弱の通勤の学校に勤務していた私は、 学校関係者と保護者に電話で状況を報告して、Uターンして安城駅に向かった。2時間はかかる。
「もし、また生徒から連絡が入ったら、寒いからコンビニの中で待っているように伝えて。」
そう母に言い残して、力強くハンドルを握った。
教員生活の中でも忘れることのできない事件。 約2時間かけて 指定されたコンビニに到着する。午後11時近い。
バクバクしながらコンビニの駐車場に入ると、店の外の隅でうずくまる二人を発見した。
いた!いたいた!
静かに駐車場に車を止め、高鳴る気持ちを押さえて2人に駆け寄った。 寒さで震えている。
何と言っても2月初旬。 半べそをかきながらすり寄ってきた。
最初に出た言葉。
「無事でいてくれてよかった。」
「体調は?風邪ひいてない?」
「先生、寒いよ」
「うん。うん。とにかく車に乗ろう」 車の後部座席に乗るように促し、大きな荷物と共に乗り込んだら強制ロック!
いつ車から逃げ出すかわからない 早く保護者にも無事を伝えたいし、目を離せないし。 (携帯電話が当時普及していたら 車中からも電話がかけられたのにと今でも思う)
「みんな心配している。落ち着いたらとにかく無事であることを保護者に連絡しようよ」
「うちの親なんか心配なんてするわけないよ、先生」A子が言う。
「うちは・・・わかんない」B子がぽつり。
私服の2人は、制服姿と違ってやや大人びて見えたが異様な香水の臭いが気になる。
聞けば、お風呂に何日も入れず安い香水でごまかしているらしい。
家出中の実態が少しずつ見えてくる。
冷えた体を温めるように ひざ掛けにくるまっている二人
夜間でもあり、コンビニ周辺にたむろする暴走族(そのように見えただけかもしれないが・・)から距離を取った方がよいと思い、車を出す。
ぽつり ぽつりと会話をする中で
「少しは落ち着いた?本当にお父さんやお母さんが心配しているから家に電話するよ」
「・・・・」
「大丈夫。私も立ち会って親と話をするから」
「・・・」
「自分で連絡する?」
「いや、先生して」
「じゃあ、公衆電話で連絡してくるから 車に乗って待ってて。もう逃げないよね?」
慌てて、家庭と学校関係者、自分の母親にも連絡を入れた後、二人の自宅へ向かう。
さすがに夜11時過ぎで 少し通りから外れると車の量も少なく女性ドライバーとしては怖い。
事情聴取のようにあれこれ聞き出すことはせず、彼女たちの一つ一つの言葉をまずは受け止めたいと思った。
「こわかった。」
「先の事は考えられなかった」
「知り合った人のところに泊めてもらった」
家出していた期間の行動の全容が見えてきた。
「先生お腹がすいた」
「夕食は食べてないの?」
「うん」
状況が状況なだけに、そこまで考えてあげれなかった自分に気付く。
持ち合せのお金も底をつき、SOSの電話をしてきたのだろうか。
小さな街並みの外れで明かりが見えた。周辺も比較的明るく、数メートル先には交番の赤いランプも見えている。
そんな場所にテレビのドラマでよく見る屋台のラーメン屋。
「ラーメンでも食べようか?」
「うん」 少しだけ大きな声が聞こえた。
こんな経験をする羽目に会うとは・・・・。
2人は屋台のラーメンをおいしそうに食べた。最後のスープまで飲み干して。
私も屋台のラーメンは初めての体験であったが、今でもあの時のラーメンのスープの味が思い出される。
家出女子高生からのSOS No.3は次回
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